歌
たとえば:「世界へ飛んだ歌声」
会いに行っても、何を話せばいいのかわからなくなる日のために。
あなたは親のとなりに座っています。テレビはつけっぱなしです。いつもの三つの質問――「元気?」「ちゃんと食べてる?」「お医者さんには行った?」――はもう済ませました。時刻は十時四十五分です。
あと四十分もすれば、何もできなかったという気持ちのまま帰ることになります。そして次の日曜日にまた来て、同じことをくり返します。時間がないわけではありません。あなたはちゃんと来ています。愛情がないわけでもありません。あなたはまた来るのですから。ただ、その時間をどう過ごせばいいのかが、わからないのです。
本の最初のページを開きます。お題を声に出して読みます。ヒントをひとつ、またひとつと出し、名前が出てきたところで止めます。すると、何かがくるりと入れかわります。
会いに来てもらう側だった人が、ふたたび「知っている人」になります。だれかが持ってきた活動を、ただこなすのではありません。答えを持っているのは親のほうです。二十歳のころの歌も、土曜の夜の映画も、昔の暮らしのしぐさも、親の得意分野であって、あなたのものではないからです。
時間を埋めてあげるのではありません。話に耳を傾けるのです。
着いて近況を伝えると、十分もしないうちに沈黙が訪れます。
本のどこかのページを開いて声に出して読むと、親御さんが答えを探しはじめます。
テレビがついていて、ふたりともそれを眺め、言葉を交わさないまま一回の訪問が終わります。
本のお題をひとつ出すと、二十歳のころの話をしはじめるのは親御さんです。
いつも同じことを聞いてしまいます。食事のこと、夜の眠りのこと、天気のこと。
ラジオでどんな歌が流れていたかをたずねると、親御さんがその歌を口ずさみます。
あなたが一週間のできごとを話し、親御さんは聞いていますが、そのあと、だれも何を付け足せばいいのかわかりません。
親御さんが話し、あなたが聞きます。そして、今まで知らなかった話に出会います。
親御さんが「もう覚えていない」と言うと、会話はそこで止まってしまいます。
遊びにはヒントがあるので、親御さんは自分のペースで思い出にたどり着きます。
親御さんを待たせたまま、スマートフォンで歌を探します。
小さな四角を撮ると、ふたりのために歌が流れはじめます。
親御さんに付き添う方が、午後に何をすすめればいいのかわかりません。
付き添う方が本を開き、親御さんに思い出を語ってもらいはじめます。
つい習慣で親御さんの代わりに話してしまい、親御さんもそれにまかせています。
答えを知っているのはあなたではなく親御さん。説明するのも親御さんです。
持ち帰るのは、その週の近況だけです。
前の日まで知らなかった家族の話を持ち帰ります。
次は何を持っていこうかと考えます。
本をテーブルに置いて帰れば、次に会うときは続きのページから始まります。
| 本がないとき | 本があるとき | |
|---|---|---|
| 着いて近況を伝えると、十分もしないうちに沈黙が訪れます。 | 本のどこかのページを開いて声に出して読むと、親御さんが答えを探しはじめます。 | |
| テレビがついていて、ふたりともそれを眺め、言葉を交わさないまま一回の訪問が終わります。 | 本のお題をひとつ出すと、二十歳のころの話をしはじめるのは親御さんです。 | |
| いつも同じことを聞いてしまいます。食事のこと、夜の眠りのこと、天気のこと。 | ラジオでどんな歌が流れていたかをたずねると、親御さんがその歌を口ずさみます。 | |
| あなたが一週間のできごとを話し、親御さんは聞いていますが、そのあと、だれも何を付け足せばいいのかわかりません。 | 親御さんが話し、あなたが聞きます。そして、今まで知らなかった話に出会います。 | |
| 親御さんが「もう覚えていない」と言うと、会話はそこで止まってしまいます。 | 遊びにはヒントがあるので、親御さんは自分のペースで思い出にたどり着きます。 | |
| 親御さんを待たせたまま、スマートフォンで歌を探します。 | 小さな四角を撮ると、ふたりのために歌が流れはじめます。 | |
| 親御さんに付き添う方が、午後に何をすすめればいいのかわかりません。 | 付き添う方が本を開き、親御さんに思い出を語ってもらいはじめます。 | |
| つい習慣で親御さんの代わりに話してしまい、親御さんもそれにまかせています。 | 答えを知っているのはあなたではなく親御さん。説明するのも親御さんです。 | |
| 持ち帰るのは、その週の近況だけです。 | 前の日まで知らなかった家族の話を持ち帰ります。 | |
| 次は何を持っていこうかと考えます。 | 本をテーブルに置いて帰れば、次に会うときは続きのページから始まります。 |
この棚に並ぶ本は、どれも何かの効果を約束しています。この本は何も約束しません。この本は思い出を呼び起こし、話してもらうきっかけになります。それだけでも大きなことで、最初に会いに行った日から確かめられます。
一緒に思い出を語れるうちは、まだ一緒にいられます。

250の遊びを19種類に分けて収めています。125の遊びは、語ってもらう遊びです――歌、映画とテレビ、日々の暮らし。どれも、QRコードから見られる動画で続きが楽しめます。下の五つの種類がそれです。残りの125は、紙の上で遊ぶゲームです。シークワーズ、なぞなぞ、ナンプレ、間違い探し――昔からおなじみで、今でもちゃんとできる遊びです。
たとえば:「世界へ飛んだ歌声」
たとえば:「刑事ドラマの夜」
たとえば:「お箸の置き方」
たとえば:「番付のいちばん上」
たとえば:「お母さんの生まれた町」
さらに、鉛筆で遊ぶ14の種類: シークワーズ(遊び No.126〜137) · アロークロス(遊び No.138〜149) · クロスワード(遊び No.150〜158) · なぞなぞ(遊び No.159〜167) · ハングマン(遊び No.168〜175) · 文字チャレンジ(遊び No.176〜184) · ナンプレ(遊び No.185〜197) · 規則性クイズ(遊び No.198〜205) · 魔方陣(遊び No.206〜213) · 間違い探し(遊び No.214〜223) · 戦争(遊び No.224〜231) · ドミノ(遊び No.232〜238) · チェッカー(遊び No.239〜245) · まるばつゲーム(遊び No.246〜250)
昭和36年(1961年)の夏、NHKの『夢であいましょう』で、ある歌が初めてテレビに流れました。曲は『上を向いて歩こう』。昭和38年(1963年)、アメリカでは『SUKIYAKI』の題で、ビルボードの1位に3週続けて輝きます。歌ったのは、だれでしょう。
遊び No.1のページを見る
QRコードのついた遊びには、それぞれ専用のページがあります。まずお題、次に動画です。答えは載せていません――答えは本の中にあります。
この本では、二種類の遊びが響き合っています。ひとつは、思い出を呼び起こす遊び。撮ると歌や昔の記録が開く四角がついています。もうひとつは、鉛筆を手に、紙の上で遊ぶゲームです。
歌四角から動画の一場面が開きます
映画とテレビ四角から動画の一場面が開きます
思い出四角から動画の一場面が開きます
シークワーズ紙の上で遊びます
ナンプレ紙の上で遊びます
間違い探し紙の上で遊びます
親御さんや配偶者、あなたがお世話をしている人に会いに行き、その一時間をどう過ごせばいいかを探しているあなたのための本です。使うのは、いつもふたりで。息子さんや娘さん、配偶者、そばに付き添う方と一緒に。次に会うまでのあいだに、親御さんがひとりでページをめくることもできますが、この本はそのために作られたものではありません。
テーブルの上に本を開いて、ふたりで。画面も、アカウントも、準備もいりません。

Yvan Keynaは、起業家、講師、そして著者です。起業して20年。「新しいテクノロジーと感覚・運動の障害」分野で修士相当の学位(BAC+5)を取得しています。複数の著者を迎える予定の出版社「たすけて出版」の代表です。
著者についてもっと知る老人ホームや介護施設、訪問介護事業所、自治体、共済組合。入居者の方、利用者の方、スタッフのみなさんのための本をまとめてご用意します。
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